木を見て、森も見るのがデザイナー 〜その126(2)〜
全体の中で目立たせる箇所を絞っていくにはどうすればよいでしょうか?
お客さまから「とにかく目立たせて欲しい」と事細かにデザインのアイデアを提案された時の対応の仕方を前回にひき続き、考えていきましょう。
デザインはそもそも法則に基づいて制作しています。
同系色でまとめたり、 見出しを同じ大きさにしたり、 書体を揃えたり、その手法はさまざまです。
デザイナーとしては、 お客さまからあれやこれやと提案された内容に違和感を覚えた時は、なぜ、Aさんがこのようなことを言うのか考えてみましょう。
おそらく、その部分を目立たせたいということに囚われていて、「全体の中でどう見えるか?」 ということに気づいていないのではないかと思いました。
チラシの場合、パッと見て自分に得になる情報かどうかを判断し、必要なければ捨ててしまうものです。
チラシで一番重要なのは、手に取ったときに 「読みたい」と思ってもらうことです。
Aさんの提案通りにデザインしてしまうと、あらゆる箇所の主張が激しくなり、本当に読んでもらいたい箇所が目立たなくなってしまいます。
それでは本末転倒です。
このような事態は、デザイナーであれば、容易に想像がつくかと思いますが、一般の方はそうではなく、現在の仕上がりにさらに要素を盛り込む足し算のデザインになってしまうのです。
いい塩梅でデザインを留めておいたり、そこからさらに不要なものをそぎ落とす引き算のデザインを想像できる人はそう多くありません。
盛り込みすぎの方向へ進むのを防ぐのもデザイナーの役割なのです。
その場合、説明してもなかなか納得していただけないことが多いので、ハットツールでは、お客さま提案のデザインとこちらがお勧めするデザインの2パターンを実際に作ってお見せするようにしています。
こうした方が結果として早く納得していただけることが多いようです。
ここまで読んで、結局、手間がかかるなぁとがっかりされたデザイナーもいらっしゃるかもしれません。
しかし、これらの積み重ねがやがて信用へとつながり、 次の仕事を生み出すのだと思います。