デザインと社会通念

先日、税金についてのセミナーに行ってきました。講師は税理士です。

中でも、ご自身のクライアントが税務署の査察に入られたので、立ち会いを行った時の話が大変興味深かったです。

査察に入られないためには目をつけられないこと、目立たないことが大事とのこと。

そのためには 、「“社会通念上”という概念から逸脱しない」ことだそうです。

この「社会通念」という言葉、一度は聞いたことがありませんか?

意味は、Wikipediaによると、人間社会の「暗黙の了解事項」の一つで、法律のように明確に書き記してはいないことです。

「暗黙の了解」とは、なんとも日本らしいニュアンスですが、つまり、大多数が「当たり前」と思うことなのです。

税理士の話の中で、例えば、会社の社長が車を買った場合、経費にならない車種があるとのこと。

・レクサスは経費になる

・BMWは経費になる

・ベンツは経費になる

・フェラーリは経費にならない

なぜフェラーリが経費として税務署に認められないのでしょう。

世間一般の会社の社長は、「レクサス、BMW、ベンツは乗っているであろう」という大多数が思い浮かべるイメージはあるが、「フェラーリは違う」とのこと。

それは、「フェラーリが高級スポーツカーで、事業内容や社会常識から考えても、個人的な趣味の影響が大きい」という理由で、経費として認められないのだそうです。

例外として認められる事例もあるのですが、やはりフェラーリは経費ではないという感覚はありませんか?

こういった感覚が社会通念なのです。

つまり、デザインを作る前に考えるベースとなるものが「社会通念」ではないかと思いました。

この一件で、デザイナー仲間の苦い記憶を思い出しました。

新人デザイナーに雑誌のグルメページを任せたところ、紫と黄色の配色でデザインを作っていたのだそうです。

それを見て、「食べ物はオレンジなど暖色系の色を使わないと食欲が湧かない」とアドバイスをしたところ、「そう思いません! 私は、紫と黄色でも湧きます!」と反論されて困ったとのことでした。

おそらくそのデザイナーも一度考えたデザイン案を否定されて、意地になっていただろうと思いますが、実際のところ食べ物系の雑誌を見ても暖色系が多いのは確かです。

多くの人が見て、違和感を抱かないことも大切で、「食べ物は暖色を使う」という事例も社会通念と言っていいだろうと思います。

この社会通念からデザインが外れてしまうと、世間から受け入れてもらうのが難しくなってしまうでしょう。

それはデザインの「効果」「反応率」に関わり、ひいては「売上」にも関わってくると思います。

だからと言って、この社会通念ばかり気にしているとデザインは保守的になり、目立たなかったり、面白くないものができてしまうでしょう。

スパイス的に少しアクセントを付けたり、大胆なレイアウトやカラーにチャレンジするのですが、このさじ加減がなかなか難しくもあり、デザイナーとして楽しいところでもあると私は思っています。

このさじ加減が、作り手側、届ける側の個性になるのではないでしょうか。

 

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