急ぎの仕事の依頼
「急ぎの仕事」と言うと、「あー、嫌だ!」という声が聞こえてきそうですが、私も嫌です。
進行中の案件を後にまわしたり、はたまた、休みを返上したり、睡眠時間を削るなどして、急ぎの案件を優先することだってあります。
だから、嫌がられるんです。
この件に絡んで、以前、参加したビジネスの勉強会で話題にあがったお得意さんについての話を紹介します。
小売店での商売の内容だったのですが、デザイナーにも通ずるものでした。
どの方も、「お得意さん、常連さんほど、こちらの気持ちを察してくれる」と言います。
例えば、忙しい時には、黙って、手が空くまで待ってくれたり、他のお客様が割り込んでも、こちらが困らないように「私は急いでいないから大丈夫ですよ」と順番を譲ってくれるのだそうです。
本当に大事に優先すべきは、そのようなお得意さんなのです。
この話に、ハッとしました。
デザインの急ぎの案件の話に戻りますが、デザイナーの交流会の際に、「急ぎの案件は、どのように対応しているんですか?」と質問を受けたことがあります。
HAT TOOL DESIGNの場合、初めてのお客様で、急ぎ案件の相談をされる場合は、申し訳なく思いつつもお断りさせていただくようにしています。
今までの経験上、初めての取引にもかかわらず急ぎで依頼してくる方は、その後もずっと急ぎで頼まれることが多いですし、制作費も値切られることがよくあります。
少し話を聞くと、急ぎ案件になってしまう慢性的な理由が垣間見える時があります。
例えば、指示が曖昧でやり直しが多かったり、決定部門の判断が遅いので発注が遅れたり、土壇場になって制作費で揉めてしまい予定していたデザイナーに断られてピンチヒッターを探しているなどです。
もちろん会社に所属しているデザイナーは個人的に断ることはできない立場の方だと思うので一括りにはできませんが、私がHAT TOOL DESIGNを立ち上げる前に一人でやっていた時は、そのような急ぎの案件ばかりしか頼まれない時期があり、本当にその頃はよく値切られました。
いつも寝不足状態が続き、どんどん精神的に疲弊していきました。
ある日、起き上がれないほどのひどい腰痛になったことを機に、「世の中にはこんなお客様ばかりではない!」「きっと良いお客様はどこかにいるはずだ!」と思い、当時取引のあったほとんどのお客様との取引を思い切って解消したことがありました。
急ぎ案件に対応するのは、先ほども書きましたが、休みを返上したり、睡眠時間も削るなど体力が消耗します。
さらに誤字脱字、入稿データの不備などのミスも許されないため集中力も大切です。
しかし、馴染みのお客様で信頼関係を築いている方からの急ぎ案件であれば、大体は引き受けるようにしています。
それは「困っているのだろう」と思う人助けの心境もありますが、無理を聞いてあげるという「えこひいき」として引き受けても良いと思います。
ちなみに、デザイナーへの依頼は頻繁にあるものではありませんので、おまけを付けてあげるのも、割り引いてあげるのも良くないと思っています。
結局のところ、急ぎ案件の対応は時間や意識や体力を削って作ることになるので、極力、後々までお付き合いできるような
信頼できる本当のお客様への「えこひいき」という特別対応として取っておきたいものです。