自分と他人の当たり前は違う
以前、まつ毛エクステンションサロンのオーナーと店長がホームページなどのご相談に来られたことがありました。
そもそも、まつ毛エクステンション(通称まつエク)とはどんなものかご存知ですか?
簡単に言うと、まつ毛の増毛のようなもので、まつ毛1本ずつに人工のまつ毛を装着していくのです。
相談に来られた店舗はサロン激戦地にあるわけではありませんが、それでも駅前や近所のショッピングモールにライバル店が3~4件はあるとのこと。
そのサロンの強みは、他所よりも500~1000円ほど安いことです。また、駅から歩いて3分ほどの距離で、内装も広々とし、ゆったりしておしゃれ。
店長は、以前、勤めていたお店では指名のお客様が大勢いて、No.1のアイデザイナーだったようで、まつエクの施術の腕はよいのだと思います。
とはいえ、私のようなまつエク初心者にとっては、目を触られること自体がすごく怖いことなのです。
また、安価だとかえって、衛生面がおざなりになっていないかと不安にもなります。
以前のお店でNo.1のアイデザイナーだとしても、それを売りにホームページやチラシなどに書く訳にはいきません。
店長ご本人に強みを聞いても、考え込んでしまい、「技術には自信があって、丁寧なカウンセリングです。しかし、アイデザイナーなら当たり前のことだと思うんですが」とのこと。
「その他は、これと言って特にない」という返事。
確かに、「技術に自信あり」「丁寧なカウンセリング」は、まつエク業界に限らず、他の業界でも共通している、聞き慣れた簡単な言葉です。
とはいえ、以前のお店ではNo.1なのですから、 これを裏付けるものがこの言葉の中にあるのではないかと思います。
おそらくそこが「強み」や「売り」なはず。
よって、これについて深掘りをしてみました。
「技術に自信がある」とはどういうことかと尋ねると、店長からは「手早く仕上げること」だという答えが返ってきました。
それは、お客様の時間の都合に合わせることでもありますが、何よりも「目に負担をかけない」ことが一番だそう。
「目に負担をかけない」ために、まつ毛を取り付ける際に使用するグルーという接着剤は、様々な種類のなかから2種類を用意して、肌に合うものを選び、パッチテストも行なっています。
価格が安いといっても、お客様への健康を考えた安心への気遣いが見えてきました。
また「丁寧なカウンセリング」については、お客様の好みや要望、目の形や顔の印象、はたまた目の病気などを丁寧にカウンセリングをするのだろうと、素人の私は思っていましたが、それだけではないようです。
実は「持ちがいい(長持ち)」に関係があるのです。
まつ毛の取り付けは、生えてきたばかりの細いまつ毛やもうすぐ抜け落ちるまつ毛に取り付けても、すぐに抜け落ちてしまうので、成長期のまつ毛に付けるのが鉄則とのこと。
「持ちをよくする」ためには、「取り付けるべきではないまつ毛に装着しない」ことが大切なのです。
このサロンの店長は、カウンセリングでお客様のまつ毛の状態を聞き取り、施術でまつ毛を見極めて取り付けていきます。
質問で掘り下げていくうちに、当初は、まつエクなるものにそれほど興味がなかったのですが、この店長が、急にプロフェッショナルに見えてきました。
「マツエクをやってみてもいいかも。やるなら店長にぜひお願いしたい」と思うようになったのでした。
ご本人の「当たり前」の中には、素人から見るとプロフェッショナルな考え抜かれたこだわりがたくさん詰まっています。
差の付くデザイナーとしては、その気付いていない「当たり前」を掘り起こし、少しでも質問を重ね、聞き上手になれれば、お客様自身も気付いていなかった部分を提案してあげることができます。
それだけで、他のデザイナーとは差がつく、「強み」になるのではないでしょうか。