自分が動くことは時間を売っていること
先日、関東に20店舗ほど展開しているマッサージ店からパンフレット作成の問い合わせがあり、見積もりを送った後、電話で話しました。
「実店舗を見てもらってから、パンフレットを作るための話がしたいので、店舗まで来て欲しい」というものでした。
店舗の場所は、HAT TOOL DESIGNの事務所から電車で片道1時間30分掛かり、交通費は1000円ほど。
つまり、移動と打ち合わせ時間を合わせて、おおよそ4〜5時間は取られ、交通費も往復で2000円が掛かります。
ちなみに、HAT TOOL DESIGNでは、打ち合わせは無料ですが、「相見積もり」と「業者選定段階」は「ご遠慮ください」と「お問い合わせページ」に表記しています。
ということもあり、「遠方ですが、ご依頼前提ということであれば、お伺いしたいと思いますが、他社もご検討されているのでしょうか?」と質問しました。
「御社以外にも複数社を検討しています」と回答がありました。
困りました。
4〜5時間あれば、ちょっとしたチラシの片面ぐらいならデザインが作成できそうです。
私が「遠方で往復3時間ほど掛かるので、打ち合わせは…」と尻込みをすると、「関東一円に20店舗ほど持っているので、関東のデザイン会社に声を掛けています。いずれの会社にも、複数の業者と見積もりを検討していると正直にお話させていただきました」とのこと。
正直に話していただいたのは助かります。
失敗したくないので複数のデザイン会社から自分たちに合ったところを選びたいのだと思います。すごくお気持ちもわかります。
しかし、往復の移動に時間が取られ、交通費もこちら持ち。
その上、最終的に自分が依頼されるかどうか分からないのに、店舗を見ながらパンフレットを作るための話をしたいとのこと。
その段階であれば、制作に入るための具体的に掘り下げた話はできないだろうし、店舗を見ながら何を話すのでしょうか。面接なのでしょうか。よく分かりません。
これはリスクが多いと心の中で思いつつも、「一旦、考えさせてください」とやんわり電話を切り、メールでお断りの返事をお送りしました。
デザイナーを含めクリエーターは依頼を受けた時、自分の時間を使って作成しているのです。
即ち、自分の時間を売っているということ。
私の場合は、現在進行形の案件も同時に抱えています。
同じ時間を使うのであれば、現在進行中のお客様のために使った方が喜んでいただけるし、私自身も嬉しくなります。
一方、仕事を得る「チャンス」という見方もできるので、営業目的として、敢えて、先方に伺って打ち合わせをするという方もいらっしゃるかもしれません。
それも当然、「あり」だと私は思います。
見る側面によって、時間が無駄なのか、有効なのかどうかは人によって違ってくると思いますが、ただ、自分が動くことは「自分の時間を売っている」ということを、しっかりと認識することが、大事なのです。