あえてダサめのデザインの方がよい

かつて、私がWEBデザイナーだった頃は、「電博(電通・博報堂)」といった広告代理店から依頼される大企業のWEBサイトをデザインしていました。

 

時代は2000年ごろのネットバブルの時代。

今のようにアクセスビリティーなどうるさくなく、プラグインのFlashでガシガシ動くような、イメージ優先のおしゃれなWEBサイトをデザインしていました。

 

そこからイベントや芝居を制作する会社に転職し、紙のデザインを手がけます。WEBよりも紙のデザインの方がおもしろくなり、グラフィックデザインに移行。

 

とくに、芝居は、チラシやポスター、パンフをデザインする役割を「宣伝美術」といい、しっかりスタッフのクレジットに載ります。

 

どちらかというと、アート作品の制作に近いといえます。

 

つまり、デザインのテイストは「カッコいい」「個性的」「美しい」といったイメージ優先のデザインが求められていました。

 

私がHAT TOOL DESIGNを立ち上げるまでは、このようにイメージ優先のデザインを作ってきましたが、これは誰もが知っている商品や大企業の販促物、あるいは有名な芸能人を起用したチラシであったため、イメージ優先のデザインが通用したのだと思います。

 

「デザインはかっこいいもの」と思い込んだまま、その後、会社を辞めフリーランスのデザイナーになりました。

 

それを機に自分自身のWEBサイトを立ち上げました。

 

今までのデザインセンスを活かし、シンプルでおしゃれなデザインでしたが、まったくアクセスされず問い合わせもありません。

 

悩んだ末、私はネットビジネスの門をたたきました。

 

そこで成功している事例を見てびっくり。

お世辞にも「いい!」とは言えないものばかりなのです。

 

正直いうと、素人丸出しの「ダサい」デザインのWEBサイトに、多くのアクセスがあり、商品がバカ売れしているではありませんか!

 

商品そのものがいいという前提はありますが、こんなデザインでも集客でき、モノが売れることに、横っ面をひっ叩かれたような衝撃でした。

 

先日読んだお笑い芸人のキングコング西野亮廣さんの本にこんなことが、書かれていました。

 

「オシャレをとるか?集客をとるか?」『オシャレ』を選んでしまうとオシャレ感度の高いお客さんは呼べるけど、一方で、自分のセンスに自身が持てないお客さんが離れてしまう。オシャレには「排除」の力学が働くわけだ。

 

一方、『集客』を選ぶのであれば、「少しダサい」は受け入れなきゃいけない。

 

ということで、東京で配るチラシと地方で配るチラシはデザインが違うとのこと。

 

ちなみに、東京には、オシャレじゃない場所を避ける人も多いので、東京で配るチラシはダサすぎないようにし、地方で配るチラシは「私が入っても大丈夫」と思ってもらえるようなデザインとのこと。

 

実際のチラシのデザインは、西野亮廣さんの『新・魔法のコンパス』に掲載されているので、そちらを参考にしてください。

 

『オシャレは「排除」の力学が働く』

なるほど。そういうことなのです。

 

例えるなら、自分が道に迷った時に気軽に道を聞きやすいのはファッションモデルのような最先端のファッションでキメてスタスタ歩いている人よりも、地元に住んでいそうな普段着で歩いているおじさんやおばさんなのではないでしょうか。

 

ファッションモデルは、近寄りがたい雰囲気がありますし、その点、普段着のおじさん、おばさん(決して、普段着がダサいとは言いませんが)は親切そうな雰囲気であったり、安心感や親しみを感じとって、尋ねるのではないでしょうか。

 

デザインも同じように、「集客」を考えるならば普段着のようであり、カッコよすぎないようにすること、分かりやすく言うなら、あえて「ダサめ」のデザインにすることが見る人に安心感を与えるのではないかと思っています。

 

bt-mailmag