よく知らない分野のデザインを頼まれた。さてどうしよう
今回は「デザインの技・コツ」というよりも、私の経験談をご紹介します。
HAT TOOL DESIGNでは、チラシやパンフレット、ロゴなど、私自身がその作り方をわかっている販促物の作成依頼がほとんどです。
皆さんの中には、「どうしたらいいの?」と思うようなデザインを頼まれたことはありませんか? HAT TOOL DESIGNの場合は、例えば、アクセサリーディスプレイの台紙、表札、看板オブジェ、自動販売機やバスのラッピングなどを依頼された経験があります。
中でも特に大変だったのが、「社訓」のデザインです。
会社の入り口や会議室などに額に入れて掲げているあの社訓です。
「社訓はどのようにデザインするものなのだろう?」とお思いになるかもしれませんね。
私が依頼されたのは、IT会社の社長の言葉とイメージを額に入れて「社訓」として会議室に掲げたいというものでした。
文字は毛筆で、サイズは縦1m×横2mのビッグサイズ。金色で重厚な尊厳のある額を用意してほしいとのこと。
どのように制作すればよいのか見当がつきませんが、ほかにも各種ご依頼いただいているなじみのお客さまだったので引き受けることにしました。
まずは、社長さんの言葉を何案か自分で書いてレイアウトしてみました。その後、大まかなデザインをプレゼンしてOKをいただきましたが、その言葉を誰に書いてもらうかが問題です。
自分で書くのは下手すぎるし、書道家の知人もいません。そこでひらめいたのがお坊さんです。
お坊さんに書いていただいた書を楽天ショップで見つけた額縁屋に送り、額に入れて納品してもらえば、どうにかなるだろうかと思ったのです。
知人にお坊さんを紹介してもらい、ぶっつけ本番で和紙に書いてもらうことにしました。
そして、何種類か大きめの和紙を買い込み、いざ本番を迎えたのですが、肝心のお坊さんの書が、紙の中に収めるためか文字が尻すぼみになってしまったのです。
大きなサイズの文字を書き慣れてないのが理由だと思いますが、そもそもお坊さんの書く「書」とは書いていただくだけでありがたいことで、出来、不出来を一般人がとやかくいうものではありません。
しかし、こちらも仕事なので、お坊さんに少しだけ修正をリクエストして仕上げましたが、このまま額に入れて納品するにはやはり難ありなのです。
とりあえず、お坊さんには和紙に一通り書いていただきましたが、さてどうしたものか悩みました。
思いついたのが、大きな書をパソコンに取り込んでPhotoShopで文字の大きさと位置を
カッコよくレイアウト調整して印刷する方法です。
ずいぶん力技ですが、これしかありません。
方向転換したものの、2mもの大きな和紙にそもそもプリントできるのか、新たな壁にぶちあたりました。
しかし、必死に探せばあるものです。幸いにもHAT TOOL DESIGN事務所の近くに、絵画をキャンバスや和紙にプリントして、レプリカを作る本格的な出力屋がありました。
ここに、額縁のことも相談もすると、額縁屋を紹介してくださり、サンプルの額を見ながらの打ち合わせまでこぎつけました。なんとか完成までの道筋がみえて一安心です。
書の修正作業が大仕事で大変で、綱渡りを続けてきた案件でしたが、無事納品することができ、社長にも喜んでいただきました。
初めはどのように作るのか検討もつかないほどでしがが、そんなことでも「為せば成る」です。
精神論のようになってしまいますが、結果的には和紙や額縁の知識が増え、今となってはとても勉強になった案件でした。
皆さんも、まったく知らない案件の相談を受けることがあるかもしれません。その時は、果敢にチャレンジしてみるとおもしろいですよ。