作る前に読んで欲しいデザイン術最新記事

濃い色の背景に白抜き文字は見えにくいのか 

チラシやWEBを扱ったマーケティングや集客のセミナーに行くと、デザインについて語られることがあります。

 

例えば、

「お問い合わせボタンはamazonが黄色だから黄色がいい」

「キャッチコピーは安っぽく見えるから袋文字は良くない」

「ぼやけるから写真に影をつけない」

など、さまざまな方面から切り込まれます。

 

しかし、頭の片隅に入れておくとはいえ、一概に言えないのではないかと思いながら、セミナーの邪魔をせずに黙って聞いています。

 

そんな中でも、特に、「それを言い切ると危険では?」と感じたのが、「濃い色の背景には白抜き文字は見えにくい」です。

 

これには、裏付けがあり、1931年にG・ホームズという研究者が下記のような論文を心理学の雑誌に発表したそうです。

 

その実験とは、同じ文字サイズの「白地に黒い文字」と「黒字に白い文字」の印刷物を並べて、どのくらい離れたところまで読めるかというもの。

濃い色の背景と白抜き文字

 

・白地に黒文字は約168cm

・黒字に白文字は約140cm

それぞれ離れた場所で読むことができたそうです。

 

さらに、ダニエル・スターチという広告研究者の実験では、

・白地に黒文字は1秒あたり6語

・黒字に白文字は1秒あたり4語

読むことができたそうです。

 

この2つの実験から、「白地に黒文字の方が多くの文字を読める」のだとか。

 

これらがどのような環境で実験されたのかが書jかれていないのでわからないのですが、おそらく明るめの環境での実験だと思われます。

 

しかも、実験が行われたのは、G・ホームズ氏は1931年(昭和6年)と今から88年前。

 

ダニエル・スターチ氏に至っては、年号が書かれておらず、ネットで検索すると、1917年の本に掲載されているようです。

今から102年も前の話です。

 

現代とは大きく環境は違うので、「白地に黒文字の方が多くの文字を読める」と言い切るのは、どうかと思います。

 

例えば、バーなど薄暗い場所に置かれるメニューであれば、背景が暗いので白文字の方が読みやすいですし、タクシーの座席に掲げてあるタクシー広告は濃い色の背景で白抜き文字の方が効果が高いといいます。

 

また、看板は白抜き文字(背景色は黒でも青でも赤でも何でも)はとても見えやすいという常識的な原則があるそうです。

 

白色が膨張して太く見えるということでしょうか。

 

確かに道路案内板は、青地に白抜き文字です。

 

見るシチュエーションや文字が書かれている材質によって読みやすさが変わり、88年前や102年前の常識だったことが、時代とともに変わってくるのだと思いました。

 

マーケティングのセミナーに行くと、コンサルタントがデザインに関して「お問合せボタンは黄色」など、先述のようなセオリーを言うことがあるのですが、デザインによっては黄色がまったくそぐわないことだっておおいにあります。

ほどほどに聞いておけばよいかと思います。

店舗の見方が途端に変わる3要素

 

私の自宅から事務所までの通勤路に一軒の和食系居酒屋が一年ほど前にオープンしました。

 

「食べログ」や「ホットペッパー」にメニューや写真は掲載されているものの、一年経っても口コミはまったくありません。

そんなこともあり、居酒屋の前を毎日通るものの、私も一度も行ったことがありませんでした。

 

そんなある日、キンキンに冷えた日本酒とお刺身が食べたいという話しになり、家の近くのお店を検索。

 

すると、いつも素通りしているこの居酒屋の情報が検索でいくつかヒットしました。

その中のお客さんとおぼしき方のブログの記事を読んで、「絶対行きたい!!」とすぐさま心変わり。

 

そのブログ記事を抜粋して紹介します。

—–

店主のAさんは山梨県⚫︎⚫︎温泉で40年間居酒屋を経んできましたが、息子さんの勧めもあり、思い切ってその店を閉めて、東京に出店することにしたそうです。

(省略)

店名の「三味」は「海の物、山の物、里の物」の三つの味を引き出す店という意味。

 

お店の一番の売りは「お手頃な値段でいろいろな和食とお酒が楽しめること」と「女将さんの笑顔かな?(仲が良いです)」

だそうです。 

 

「特に変わったものはありません」とのことでしたが、メニューをなかなか興味深く拝見しました。

 

「まずい塩辛」(なんなんでしょう?)、揚げ物は「海鮮かき揚げ」に「河豚からあげ」、鯖も塩焼き、味噌煮、しょうゆ煮と通りでそれぞれ500円とお値ごろ。

 

ご亭主が17歳の時に覚えたという「チキンカツ煮」は山梨の店では40年間人気メニューで「他店では味わえない一品」だとか。

 

お酒には与謝野晶子が愛した山梨の銘酒「春鴬囀(しゅんのうてん)」も提供されます。

(省略)

住み慣れた郷里を離れ、縁もゆかりもなかったこの界隈に来てくださった76歳の決断に敬意を表し、成功をお祈りします!

—–

ブログ記事の抜粋は以上です。

 

居酒屋店主と奥さまの笑顔のお写真が載り、文章からも店主の人柄や心意気も伝わる心温まる記事だと思いました。

 

そして、76歳で郷里を離れて、東京に出店されたということが何よりも応援したくなりました。

 

ということで、早速翌日お店へ。

本当にいいお店でどれも美味しかったです。

 

一年間も毎日素通りしていたのに、このブログ記事を読んで途端に行きたくなるなんて我ながら驚きました…

 

ちなみに、反応があるチラシには3つの共通点があると思っています。

1)人の写真が載っている

2)気持ちがこもっている

3)お店のバックストーリーが紹介されている

 

お客さん目線になって見ると、下記のような気持ちが湧いてくると思います。

1)は、どんな人なのか分かるので安心できる

2)は、心のこもったサービスが期待できる

3)は、心を打たれて応援したくなる

 

このブログ記事は、この3点を満たしていると思いませんか?

 

このブログ記事のような内容をチラシやホームページなどに載せると私のように心を打たれて来店する人がいると思います。

 

手っ取り早く、まずは、店頭にチラシを置いて、通りかかる人に持って帰ってもらい、チラシの効果を測定してみてはどうだろうかと、勝手ながら思ったのでした。

イラストで伝わる情報

私はビジネスの勉強会に参加しているのですが、先日、「ファシリテーター」なるものを担当しました。

 

ファシリテーターとは、簡単に言うと、「良い会議へ導く進行役」のこと。

 

勉強会の内容は、勉強会主催者が抱える仕事の困りごとを解決することです。

 

主催者の業界や仕事内容を参加者に理解してもらうために、私が主催者の会社を見学し、客観的に感じたことを勉強会で説明する時間が与えられました。

 

うまく伝わらなければ、そもそも解決するアイデアが参加者から出てこないので、これは大役です。

 

しかも、この主催者は、実は某1部上場企業にお勤めの会社員。

 

営業部署に配属され、営業成績を伸ばすにはどうすればよいかを会社には内緒で身銭を切って、勉強しているのです。

 

よって、私がその会社を堂々と見学するわけにもいかず、取引先のホームページを作成する業者という体裁で、主催者の会社に潜入しました。

 

私自身、仕事の打ち合わせ以外で、見ず知らずの会社に入るのは初めてです。

 

しかも、私は長年、デザイン業界にいたので、営業担当者が大勢いる企業も初めてなのです。

 

社内は、さすが営業担当者が多い会社だけあり、そこらじゅうで話し声がしています。

また、創業50年以上の会社なので、独特のしきたりで進行される朝のミーティング。

 

今まで見たことのない光景と写真を撮ることもはばかれる雰囲気に圧倒されて、見学は終わってしまいました。

 

さて、これをどう伝えればよいでしょうか。

 

言葉を尽くしても、伝わる自信はありません。

 

ということで、イラストで表現することにしました。

それがこれです。

イラストで伝わる情報

 

勉強会の当日は、このイラストに言葉を添えて報告しました。

 

参加者からは、

「なぜ、皆、立って話しているの?」

「込み入った話になったらどうするの?」

「机の上はなぜ何も置いていないの?」

「(イラストを指差して)この雰囲気では、言いたいことも言えないな」

などの意見や質問があがってきました。

 

このイラストを見て、質問が出たり、話が深くなり、思っていた以上に、この企業の持つ独特な雰囲気が伝わったことに驚きました。

 

私がデザインを作成する手法として、文字ばかりでは紙面全体を見た時に読みづらい印象を与えてしまうため、それを緩和し、また、紙面をにぎやかにするためにイラストを挿絵や捨てカットとして使うことがありました。

 

しかし、イラストは写真とは異なり、無駄な部分を省略し、必要な箇所を強調できるのがメリットだと今回、改めて感じました。

 

すなわち「デフォルメ」ができる。(当たり前のことではあるのですが。)

 

ちなみに、下図は商品の使い方を解説したイラストです。

背景を削除し手元だけを強調しました。

 

イラストで伝わる情報

「デフォルメ」ができることは、もちろん、頭では分かっていましたが、イラストが持つ本来のこの強みをしばらく忘れていたように思いました。

 

漫画で描くチラシ、漫画で描く会社概要という手法もありますが、いつか提案してみたいと思いました。

 

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